こんにちは。先日Twitterのスペースで、最近のAIの発達がWeb業界にどう影響するかを考えてみました。そのまとめというか、改めてテキストとして残そうと思います。
一応録音が残っていますのでリンクを貼っておきます。
テキストからUIを作るAIの登場
ChatGPTが登場してから早数ヶ月、色々なAIが各社から発表されたわけですが、ついにUIを作るAIが登場しました。Galileo AIです。
2/10現在、まだ早期アクセス版へのリクエストだけができる状態で実際に試せるわけではないようですがそれでも驚異的なプロダクトです。
デモ動画をみると、現状のトレンドと同じくテキストを入力するだけでデザインが完成しています。
これで生成されたデザインはFigmaで編集可能なファイルになるようで、人間が手直しをする時もスムーズにできそうです。
正直、これには僕も衝撃を受けました。Stable Diffusionなどのイラストを書くAIが出た頃は、まだAIが発達するまで時間が適応の準備ができるだろうと思っていました。
しかしChatGPTから始まったここ数ヶ月の動き、そしてこのGalileo AIの登場を受けて「あー結構やばいかも」と思い始めています。
もちろん、生成されたデザインがそのまま通常のプロダクトにガンガン使えるかというとそうではないでしょうが、一方で予算がない環境では十分に使われるだろうと思っています。
2/24追記
uizardという新しいツールも出てきました。こちらはすでに利用可能な状態です。
現段階で考えられる使い方
まず現段階で考えられる使い方としては以下のものが挙げられると考えています。
- デザイナーがクライアントのイメージを掴むために、AIを使ってデザインパターンを短時間で複数提案する。
- デザイナーがデザインをする際のサポートツールとして使う
- エンジニアが個人プロダクトを作る際にデザインをAIで作る
- 低予算の場合に、デザイン部分をこれで済ませてコーディングだけ行う
Galileo AIがどのくらいの精度でデザインを出してくるかによって変わる部分ではありますが、ラフデザインの代わり、もしくは非デザイナーがデザインするよりは良いものができる、という立ち位置があると思っています。
ChatGPTが、例えば記事のライティングをし始めていたり、プログラミングにおいてある程度の精度でコードを書き始めていることを考えるとこの程度は可能でしょう。
今の所はデザインからコードを起こすのを高精度で行うAIが多分ない(あるかも)ので制作部分は人が介入する必要があると思われます。
近い将来、可能になるであろう使い方
しかし、もう少し先のことを考えればおそらくデザインからのコーディングも可能になっていくでしょう。あるいは、もう可能になっているかもしれません。
僕がChatGPT公開からの各種AIの登場に関して最も衝撃的だったのは、「実は色々なAIが水面化でたくさん潜んでいた」という事実です。
今発表されている各種AI(ex. Perplexity.ai, GoogleのBard)も、どう考えてもChatGPTを受けて開発を始めたわけではないはずです。ずーっと前から開発はされていて、ChatGPTがユーザーにこれだけウケていることを見て「俺らもジャブ打っとかないとまずくね?」と慌てて発表したようにも見えます。
それこそGalileo AIだってたまたま他のものより先に発表しただけで、もしかしたらデザインからコーディングまで一気通貫で生成してしまうAIがもう存在している可能性があります。
となると、デザインもコーディングも概ねAIがやって最後のちょっとした手直しだけ人間がやればいい世界は案外すぐそこまで来ているかもしれません。
少し別の方向に目を向けて、AIが出る前までサイト制作の自動化領域で先頭を走っていたノーコードツールはどうでしょう。AIも人間の手を介さず、自動でサイトを作ることに取り組んでいます。そうなると、デザイナーやエンジニアよりも先にノーコードツールの方が消滅する可能性があると考えています。
AIの精度が高いなら、そちらの方が低コストになるはずです。コーダーどころかデザイナーすら必要なくなるわけですからね。しかも生成にかかる時間がそこまで長くなければ、ビジネスオーナーが納得いくまで何度でも生成ができるはずです。
さらに今のノーコードツールはプラットフォームビジネス化しているところが多く、コードのエクスポートや独自ドメインの取得、アナリティクス系ツールの導入が有料のことがほとんどです。一方AIの場合は、今のところ独立したデザインファイルやコードを生成する形で進んでいます。プラットフォームに依存しない形で運用できる方が明らかに取り回しが良いので、その点でもAIが上回っています。
というわけで、Web業界においてAIがもたらすであろう影響はかなりのインパクトを持っていると考えています。
じゃあ、我々はどうすればいいのか
制作部分がAIに取って代わられるとしたら、残すはマーケティング領域やディレクション領域です。
クライアントの要求を引き出し、そこから要件を決めたりブランディングの方向性を考えたりはまだAIが介入できないだろうと思います。
しかし、個人的にはこの領域もAIが活躍する余地があると思っています。
マーケティングはいかに市場の情報からユーザーの潜在的なニーズを掴むかがカギです。であれば、情報量ではおそらく人間がAIに勝つことはできません。単純に情報から回答を出す分にはAIの方が得意、というか最も適した分野でしょう。
ディレクションも、クライアントがどんな目的のためにどんなサイトを作りたいかが決まっているならAIだって質問形式で深掘りはできるでしょうし、そこから要件を定義していくことも可能に思います。なんならどんなサイトを作るべきかのレコメンドだっていずれはできるでしょう。
ただ、現状のAIには当然弱点もあると思っています。
- 元になるデータが無いといけないので、どこにもテキスト化されていない情報などにはアクセスできない
- 最大公約数的な回答をしてくるので、特定の領域やテーマに寄り添った回答がやや難しい
ビジネスにおいては、いかに人々の課題を見つけ適切な解決法を見出すかが競争力の源泉です。日常のある時にふと気づいた課題あるいは解決法は、その時点では他の誰にも知られていない情報です。当然AIにも触ることができません。
そしてAIが出す回答は、良く言えば精度が高い、悪く言えば当たり障りのないものに収束していきます。特定の社会課題を取り巻く環境や細かい知識に即した回答はまだ人間にしか辿り着けない領域ではないでしょうか。
しかし、僕はAIは全くの門外漢なのでもしかしたらこれらも問題ないのかもしれません。
ここまでやや悲観的な内容になりましたが、チャットボットの専門家の記事による「ChatGPTはそこまで脅威ではない」という趣旨の記事を出されています。
まだまだ人間にしかできないことは残されていそうです。
まとめ
というわけで、AIがWeb業界に与える影響について考えてみました。Web制作・Web開発に携わる人は、やはりある程度ディレクションやマーケティング領域に進む必要性が高まっていると言えます。
あるいはAIをいかに有効活用するかという観点で情報を集めるのも良いでしょう。競合と捉えるのではなく共存できる方法を考えるということです。
余談ですが、アンドリューNDR114という映画でロボットと人間について描かれた映画があります。
人間とAIの境目はなんなのかがテーマで、まさに今の人工知能を考える上で参考になる映画です。ぜひ見てみてください。
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